自筆証書遺言とは?自筆証書遺言の定義、自筆証書遺言と公正証書遺言の違いと法的効力を持つための要件について

自筆証書遺言とは

自筆証書遺言は、遺言者が自分自身で手書きで作成した遺言書のことです。この形式の遺言は、最も簡単で低コストな方法ですが、法律の要件を守らないと無効になってしまうリスクもあるため、注意が必要です。

自筆証書遺言の最大の特徴は、自分の意思を自由に表現できる点で、特別な手続きを必要とせずに遺言を残すことができる点が魅力です。しかし、その反面、遺言が無効となる原因となるような不備や誤解が生じやすいことも事実です。


自筆証書遺言の定義

自筆証書遺言は、遺言者が自分で全て手書きし、署名押印を行い、日付を記載することで成立します。遺言者が自分で書いた内容を他者が代筆したり、機械で打った場合は無効となります。遺言の内容に不備がある場合、後で問題になることもあるため、法的要件を厳守する必要があります。

自筆証書遺言の要件

  1. 全文手書きであること
  2. 日付の記載(遺言書が作成された年月日)
  3. 署名(遺言者の名前)
  4. 押印(遺言者の実印)

これらの要件が満たされていない場合、遺言書は無効になる可能性があります。


自筆証書遺言と公正証書遺言との違い

自筆証書遺言と公正証書遺言は、それぞれに特徴と利点があり、作成方法や法的効力、手続きにおいて異なります。以下でその違いを説明します。

作成方法

  • 自筆証書遺言
    • 遺言者が自分で手書きし、署名、日付、押印を行います。
    • 他の人に代筆してもらうことはできません。
    • 遺言書は遺言者が自分で保管するため、紛失や隠匿のリスクがあります。
  • 公正証書遺言
    • 公証人の立ち会いのもとで、遺言者の意思を公証人に伝え、公証人が遺言書を作成します。
    • 公証人が作成し、証人2名以上の立会いが必要です。
    • 公正証書遺言は、公証人が保管するため、紛失や隠匿のリスクが低いです。

法的効力

  • 自筆証書遺言
    • 形式に不備があると無効になるリスクがあります。
    • 遺言書を開封する前に、裁判所で検認手続きを行う必要があります。この手続きには時間と費用がかかる場合があります。
  • 公正証書遺言
    • 公証人によって作成されたため、形式的に有効であり、遺言書を公証役場で保管してもらうことができるため、後で遺言書を探す手間がなく、検認手続きが不要です。

費用

  • 自筆証書遺言
    • 費用はほとんどかからないため、最も低コストで遺言を作成できます。
    • ただし、遺言の内容に誤りがある場合、後で修正が必要になったり、無効となる可能性があるため注意が必要です。
  • 公正証書遺言
    • 公証人への手数料がかかります。遺産の額によって料金が決まり、数千円から数万円程度の手数料が必要です。
    • 費用がかかりますが、効力が高く、トラブルを防ぎやすいというメリットがあります。

保管

  • 自筆証書遺言
    • 遺言書は遺言者が自分で保管しなければならないため、紛失や隠匿されるリスクが高いです。
    • 近年では、法務局で自筆証書遺言を保管する制度が導入されており、この制度を利用すれば、紛失のリスクを減らすことができます。
  • 公正証書遺言
    • 公証人が遺言書を保管するため、紛失や隠匿のリスクが低いです。
    • 公証役場に保管されているため、遺言者が亡くなった後も、容易に遺言書が見つかります。

自筆証書遺言の法的効力を持つための要件

自筆証書遺言が法的効力を持つためには、次の要件を必ず満たさなければなりません:

  1. 全文手書き:遺言者がすべて自分の手で書くことが必須です。パソコンで打ったり、他人に代筆しても無効です。
  2. 日付の記載:遺言書には作成した日付を記載する必要があります。これによって、後に作成された遺言が有効となります。
  3. 署名と押印:遺言者は自署し、実印で押印しなければなりません。署名や押印がなければ、遺言書は効力を持ちません。

また、相続人の記載ミスや不備があった場合、遺言の効力が無効になったり、相続争いが起こる可能性が高くなります。自筆証書遺言を作成する際には慎重に法的要件を守ることが大切です。


行政書士の役割

自筆証書遺言に関して、行政書士は以下のような役割を果たします:

遺言作成のサポート

  • 自筆証書遺言を作成する際に、遺言者が法的要件を満たしているか確認し、必要なアドバイスを行います。たとえば、署名や日付の記載が正しく行われているか、適切な内容になっているかをチェックします。
  • 自筆証書遺言が無効とならないように、注意深くサポートします。

遺言内容の整理とアドバイス

  • 遺言内容に関して、遺言者が不安に思っていることや明確にしたいことについて、相続法や遺産分割の観点からアドバイスを行います。
  • 必要に応じて、遺言者が相続人との間でトラブルにならないように内容を整えることができます。

公正証書遺言の作成支援

  • 公正証書遺言の作成にあたっては、公証人との調整や必要書類の準備を行い、遺言者が公証役場に出向く手続きをサポートします。

相続手続きのサポート

  • 遺言書が有効であるかどうかの確認を含め、相続手続き全般のサポートを行います。相続財産の調査や遺産分割協議書の作成、相続税の申告サポートなども行います。

まとめ

自筆証書遺言は、遺言者が自分の手で記した遺言書であり、簡単で低コストな手段ですが、法的要件を満たさないと無効になるリスクがあります。一方、公正証書遺言は、より効力が強く、手続きの安心感がありますが、費用がかかります。

行政書士は、遺言書作成時の法的なサポートやアドバイスを行い、遺言が法的に有効であることを確認する役割を担います。また、遺言書作成後の相続手続きにもサポートを提供し、遺産相続の円滑化を手助けします。