農地転用をすることができない農地とはどんな土地?

農地転用には、基本的には許可が必要ですが、特定の条件下では転用ができない場合があります。これらの土地や状況について説明し、農地転用許可申請の審査基準についても詳しく説明します。また、行政書士がどのように関与するかについても触れます。

農地転用することができない農地とは?

農地法には、転用ができない農地についての規定があり、いくつかの種類の農地は転用が制限されています。主に以下の土地が農地転用できない、または制限されることがあります。

農業振興地域内の農地

農業振興地域は、農業の生産基盤を保護・強化するために指定された地域で、特に農業活動が重視される地域です。この地域内の農地は、農業に供されることが最優先とされ、転用が制限されます。転用には非常に厳しい基準が設けられており、原則として農業目的以外の利用は認められません。

農業集落内の農地

農業集落内の農地は、農業集落の生活基盤として重要な役割を果たしている土地です。このような土地は、農業活動の中心となるため、転用が制限されます。農業集落の農地を転用する場合、住民への影響や農業の維持に与える影響が大きいため、許可が得にくいことがあります。

ため池や溜め池などの水田

ため池や溜め池は、農業用水の供給源として重要な役割を果たします。これらの施設を取り巻く土地は、水田としての機能が維持されることが望ましく、その転用には厳しい規制が課されています。特に、農業用水の供給に影響を与える可能性があるため、転用は慎重に審査されます。

地盤沈下が進んでいる地域の農地

地盤沈下が進行している地域では、転用後の土地の利用や開発が難しくなる可能性があります。農地が地盤沈下地域に位置している場合、土地の安定性や水害のリスクが懸念されるため、転用には注意が必要です。このような土地は、農地転用許可が得にくくなることがあります。

農地転用許可申請の審査基準

農地転用を申請する際には、農業委員会や都道府県知事が審査を行い、転用の可否を決定します。審査基準は以下のように複数の基準に基づいています。

立地基準

転用予定地がどのような立地にあるかが審査されます。具体的には、転用する土地が市街地に近い場所や、都市計画区域内にある場合など、立地条件が転用許可に影響を与えます。また、周囲の土地利用との調和が取れているかも重要なポイントです。

一般基準

転用申請者の土地利用計画や転用後の用途、そしてその土地がどれほど農業に適しているかが審査されます。農業利用が可能な土地を無駄に転用することが避けられるように、農地の利用価値も審査基準に含まれます。

食糧安全保障の確保

農地転用にあたって、食糧生産の確保が重要視されます。農業生産基盤の減少が食糧の安定供給に影響を与えることを防ぐため、転用申請が農業生産に与える影響を考慮しなければなりません。食糧安全保障に対する影響が小さいと認められる場合に限り、転用許可が出ることがあります。

地球環境の保全

農地転用に際して、環境保護の観点も重要な基準です。特に、農地が生物多様性や自然環境の保護に貢献している場合、その転用が地球環境に与える影響を評価します。環境保全が損なわれないように転用が進められる必要があります。

地域社会の活性化

農地転用が地域社会に与える影響も考慮されます。転用後の土地が地域の経済活動や生活環境の向上に寄与する場合は、地域活性化に貢献するとして許可が出やすくなります。逆に、転用後の用途が地域にとって不利益である場合、許可が下りにくくなります。

農地転用許可申請の審査基準に影響を与える主な要因

以下の要因は、農地転用の審査基準において重要視されます。

  • 転用後の利用目的
    転用後の土地の使用目的が地域にとって有益か、または農業に戻せる可能性があるかが評価されます。
  • 農業用地の必要性
    その土地が農業にとって不可欠な場所である場合、転用許可が出にくくなります。特に重要な農業用地では転用が制限されることが多いです。
  • 環境影響評価
    農地転用が環境に与える影響を評価するため、環境アセスメントが求められる場合もあります。特に自然保護区域や水源地などでは厳しい評価が行われます。

行政書士の役割

行政書士は、農地転用手続きの専門家として重要な役割を果たします。具体的には:

  • 申請書類の作成
    農地転用の申請に必要な書類(転用計画書、登記簿謄本など)の作成を支援します。正確な書類作成は、転用許可が得られるかどうかの重要な要素となります。
  • 審査基準に基づく助言
    農地転用許可が下りる可能性を高めるために、申請者に対して審査基準に基づくアドバイスを行います。立地基準や地域社会の活性化の観点を踏まえて、最適な申請方法を提案します。
  • 手続きの代行
    行政書士は、農業委員会や都道府県知事に対する申請を代理し、スムーズな手続きを進めます。
  • 審査結果のフォローアップ
    審査の結果、不許可となった場合にはその理由を把握し、再申請や必要な対応策を提案します。

結論

農地転用には多くの制限があり、転用ができない土地が存在します。特に農業振興地域や農業集落内の農地、ため池や溜め池がある水田、地盤沈下が進行している地域の農地などは、転用が制限されるか許可が下りにくい場合があります。農地転用の審査には、立地基準や一般基準、環境保護や地域活性化など様々な要因が考慮されます。行政書士は、農地転用手続きを円滑に進めるために、申請書類の作成や審査基準に基づくアドバイスを行い、申請者をサポートします。