遺言書作成の実例:妻に退職金を遺したい
退職金を遺言で妻に遺すことを考えた場合、その内容にはいくつかの特有のポイントが存在します。退職金は、通常、死亡時に支払われる死亡退職金として、相続財産には含まれず、配偶者に直接支払われる場合が多いという特徴があります。したがって、遺言書を作成する際には、退職金に関する法律的な扱いや、相続人や遺贈の取り決めを正確に理解する必要があります。
以下に、退職金を妻に遺すために必要なポイントを解説し、実際の遺言書作成の流れを示します。
退職金に関する基本的な理解
退職金は、退職した従業員に対して支払われるものであり、その中でも死亡退職金は、遺言書で記載する相続財産の範疇には含まれません。死亡退職金は「みなし相続財産」として扱われ、相続税の課税対象とはならないため、通常の相続財産に加算されることはありません。
重要なポイント
- 死亡退職金は、会社からの支払いであり、法的には遺言書に関わらず、配偶者が最優先で受け取ることが一般的です。
- 多くの企業では、就業規則で配偶者に第一の受給権があることを規定しており、退職金は配偶者が受け取ることが確定しています。
したがって、退職金について遺言書に記載しても、死亡退職金が配偶者に支払われることに変更はありません。
退職金は遺言書に記載する意味があるか?
退職金は死亡退職金として配偶者に支払われることがほとんどですが、それでも遺言書に記載しておくことは一つの方法です。ただし、遺言書において死亡退職金が相続財産に含まれないことを理解した上で、遺言書に明確に記載すべきです。
もし、退職金以外の財産に関して遺言書を作成し、妻に相続させたい場合は、その内容を遺言書に記載することが適切です。遺言書には、「死亡退職金は配偶者に支払われるため、他の相続財産をどのように分けるか」を明確に書くことが重要です。
遺言書の文例
「私の死亡退職金は、会社の規定に従い、妻○○(氏名)に支払われるものとし、その他の財産に関しては、以下のように相続させる(遺贈する)。」
妻以外の人への遺贈について
もし、妻が死亡退職金を受け取る一方で、他の相続人に対して相続させたい場合や遺贈を行いたい場合、その意図を明確に示す必要があります。しかし、死亡退職金については、配偶者が受け取る権利が最優先であるため、他の相続人(例えば、子や親など)にはその取り分はありません。
企業の就業規則では、配偶者に対して第一の受給権があることが定められている場合が多く、もしこの規定に従った場合、死亡退職金は遺言に関わらず配偶者に支払われることになります。
例えば、もし妻以外の子や親に対して死亡退職金を相続させたり遺贈しようとしても、法的に無効となる可能性があります。この点を理解しておくことが重要です。
就業規則と遺言の関係
多くの企業では、死亡退職金の受取人について就業規則に規定がある場合がほとんどです。この規定では、死亡退職金が配偶者に優先的に支払われることが多く、企業側は遺言書に記載された内容に従うことなく、配偶者に直接支払うことになります。
また、就業規則により配偶者に第一の受給権が与えられている場合、たとえ遺言書で他の相続人に退職金を渡す旨を記載しても、その部分は無効とされることが多いです。
したがって、死亡退職金について遺言書を作成することは、あまり意味がない場合があることを理解し、遺言書作成時にこの点を確認することが重要です。
遺言書における退職金の記載方法
退職金に関する遺言書の記載方法としては、以下のように記載します。
遺言書の文例
「私の死亡退職金に関しては、会社の規定に従い、妻○○(氏名)に支払われるものとする。その後、私の他の財産に関しては、以下の通り相続させる(遺贈する)。」
こう記載することで、死亡退職金の取扱いが明確になり、他の相続人に対する配分についてもきちんと示すことができます。
行政書士の役割
遺言書を作成する際、退職金に関する法的な取り決めや遺言書の内容に不安がある場合は、行政書士に相談するのが効果的です。行政書士は、遺言書の内容が法的に有効であるかを確認したり、遺産分割に関するアドバイスを行ったりする専門家です。
行政書士の役割
- 遺言書の作成支援や内容の確認
- 死亡退職金の受取人の選定に関するアドバイス
- 遺言書が無効にならないように法的に正しい文言をアドバイス
行政書士に相談することで、遺言書の内容が法的に正当であることを確認でき、万が一の際にトラブルを避けることができます。
まとめ
退職金、特に死亡退職金については、遺言書を作成する際に注意が必要です。多くの企業の就業規則で死亡退職金は配偶者に優先的に支払われると定められており、遺言書にかかわらず配偶者に支払われることが一般的です。したがって、遺言書に記載する際には、その内容を理解し、退職金に関する事項は正確に記載することが大切です。
また、退職金以外の相続財産に関して相続させたり遺贈を行いたい場合、その旨を明確に記載することで、相続人間での混乱を防ぐことができます。遺言書作成に不安がある場合は、行政書士に相談することで、より確実に遺産を管理し、相続手続きが円滑に進むようにすることができます。