遺言書作成の実例:生命保険の受取人を変更したい
生命保険の受取人を変更することは、遺言書を通じて行うことが可能です。しかし、生命保険金がどのように取り扱われるかについては特別な法律的な背景があります。生命保険金は通常、相続財産ではなく、受取人固有の権利として扱われ、遺言書で直接的に変更を指示する場合には注意が必要です。
ここでは、生命保険の受取人を変更する際のポイントや手続き、そして遺言書作成時に気をつけるべき事項を解説します。
生命保険金の扱いとその特徴
生命保険金は、契約者が死亡した場合に指定された受取人に支払われます。このため、生命保険金は相続財産には含まれません。つまり、相続人が生命保険金を受け取る権利を持つわけではなく、指定された受取人のみがその権利を持つことになります。
- 生命保険金は相続財産ではない:通常、生命保険金は相続税の対象になりますが、相続財産には含まれません。これにより、生命保険金の受取人はその人固有の権利として支払われることになります。
- 取得の権利は相続人ではなく受取人にある:例えば、契約者が死亡した場合、保険金を受け取る権利は指定された受取人にあり、遺言書で指定されるものではありません。つまり、遺言で受取人を変更したい場合、遺言書の記載方法が非常に重要です。
受取人の変更手続きの必要性
生命保険の受取人を変更したい場合、遺言書だけで変更が確定するわけではなく、保険会社に対して正式な変更手続きを行う必要があります。遺言書に記載して指示をしても、保険契約における受取人変更手続きが実行されていなければ、変更は反映されません。
遺言書において受取人の変更を指示する際には、以下の点を漏れなく記載することが重要です。
遺言書に記載すべき生命保険の情報
遺言書で生命保険の受取人変更を指示する場合、契約者名、被保険者名、保険会社名、証券番号などを明確に記載することが求められます。これらの情報を記載することで、後々の混乱を避け、確実に保険会社が変更を反映できるようになります。
遺言書の文例
「○○(被保険者名)の生命保険に関して、以下の変更を行うものとする。
契約者名:○○(契約者名)
保険会社名:○○生命保険株式会社
証券番号:123-456-7890
受取人を○○(新受取人名)に変更する。」
これにより、遺言書を実行する際に遺言執行者がその内容を正確に反映するために必要な情報が提供されます。
受取人の変更が遺言書の指示によって行われる場合
遺言書によって生命保険の受取人を変更することはできますが、遺言執行者を指定して確実に手続きを行うことが求められます。受取人変更の手続きには、遺言執行者が関与し、保険会社に対して正式に変更手続きを行う必要があるため、遺言書内で遺言執行者を指定し、その義務を確実に果たすことが重要です。
遺言書における遺言執行者の指定例
「上記の生命保険の受取人変更について、遺言執行者である○○(遺言執行者名)にその手続きを委任し、適切に変更が行われるようにする。」
遺言執行者は、遺言書に記載された内容を実行する役割を担います。したがって、遺言書における生命保険金の受取人変更も、その一環として実行されることになります。
特別受益と持ち戻しの問題
生命保険金を受取人以外の人に受け取って欲しい場合、特別受益や持ち戻しの問題が発生することがあります。特別受益とは、相続人が生前にすでに受け取っている財産が相続財産に加算されるべきかどうかに関する問題です。
もし、生命保険金を特定の相続人ではなく他の人(例えば配偶者以外の相続人)に相続させたい場合、遺言書でその旨を記載することができますが、その場合の取り決めには特別受益や持ち戻しに関する調整が必要になる場合もあります。
例えば、生命保険金を受け取ることが確定している相続人以外の人に相続させる場合、その分を相続人間での財産分配に含める必要がある場合があります。
遺言書の文例
「○○(相続人名)に対する生命保険金の受取は、特別受益として他の相続人の取り分に含めるものとし、持ち戻しを行う。」
このように、生命保険金を受取人以外に相続させる場合、他の相続人との調整を行い、その旨を遺言書に記載することが大切です。
行政書士の活用
遺言書を作成する際に、生命保険の受取人変更やその他の財産の相続について不安がある場合、行政書士に相談することをお勧めします。行政書士は、遺言書の内容が法的に有効であるかを確認し、必要な手続きや書類を整えるサポートをしてくれます。
行政書士の役割
- 遺言書作成時に生命保険の受取人変更を明確に記載するアドバイス
- 特別受益や持ち戻しに関する法律的な助言
- 生命保険金の受取人変更手続きに必要な書類や手続きのサポート
行政書士に相談することで、遺言書の内容が法的に問題ないかを確認でき、遺言執行がスムーズに進むようにサポートしてくれます。
まとめ
生命保険の受取人を変更するために遺言書を作成する場合、契約者名、被保険者名、保険会社名、証券番号をしっかり記載し、遺言執行者を指定することが重要です。生命保険金は相続財産には含まれず、受取人が固有の権利を持つため、遺言書に記載された内容が反映されるためには、保険会社に対して正式な手続きを行う必要があります。
また、特別受益や持ち戻しの問題を考慮し、遺言書内での相続内容を明確に記載することも大切です。遺言書作成に不安がある場合、行政書士に相談することで、法的に正しい手続きを確実に進めることができます。