遺言書作成の実例:家業を手伝ってくれている長女に相続分とは別に相続させたい
遺言書作成において、家業を手伝ってくれている長女に相続分とは別に財産を相続させたい場合、寄与分をどう具体的に記載するかは非常に重要です。寄与分が法的に認められるためには具体的な証拠や事実に基づく詳細な記載が求められるため、慎重に作成する必要があります。以下に、寄与分を認めてもらうためのポイントと具体例を示します。
寄与分とは
寄与分とは、相続人が亡くなった方(遺言者)の財産形成や維持にどれだけ貢献したかに基づいて、通常の相続分に加えて相続することができる分を指します。家業や事業の運営、介護などに積極的に関与した場合、その貢献度に応じて相続財産を増やすことが認められることがあります。しかし、寄与分は一般的に、相続財産に直接貢献した場合に限り認められるため、単なる家族としての協力ではなく、具体的かつ専門的な貢献が必要です。
寄与分が認められる具体的なケース
家業の手伝いや生活の大半を費やしてきたことを、どのように証明し、どのように記載するかが重要です。以下に具体的な事例を挙げます。
- 家業の手伝い:長女が家業の運営に積極的に携わっていた場合、その労働時間や具体的な仕事内容(例えば、経理、営業、製造など)を明確に記載します。例えば、「長女は○○年から家業の経理業務を担当し、毎日〇時間、週〇日働いてきた」といった具体的な貢献の内容を記載することが有効です。
- 療養看護:遺言者の介護や看護に関しても、単に家族として行ったものではなく、他の相続人や外部の支援者に代わる形で献身的に行ったことを強調します。例えば、「長女は遺言者が病気で寝たきりになった○○年から、ほぼ毎日介護を行い、介護士や看護師を雇わず、医療費の支出を削減することに貢献した」といった具体的な記載を行います。
生活の大半を費やしたという点の証明
「家業の手伝いに生活の大半を費やしてきた」という点を証明するためには、長女がその時期にどれだけ家業に貢献したかを示す具体的な証拠が必要です。例えば、長女が家業に携わる前後の生活状況(勤務先、収入、生活時間など)や、家業を支えていた具体的な状況を示すことが有効です。さらに、第三者の証言や勤務記録(あれば)も寄与分を認めるために有効な証拠となります。
介護に関して
長女が遺言者の介護に関して、他の相続人と比べて格段に多くの時間を費やし、例えば医療費を節約できるような貢献をしていた場合、それが寄与分として認められる可能性があります。しかし、介護は家族として当然の義務とされる部分もあるため、「他の相続人が負担しなかった時間や業務」を特定し、それを具体的に記載する必要があります。
例えば、「長女は他の相続人が参加しなかった夜間の介護を毎晩担当し、医療面でのサポートを行った」など、他の相続人が負担しなかった部分に焦点を当てることがポイントです。
寄与分を認めてもらうための記載方法
寄与分を認めてもらうためには、遺言書の中で以下の点に注意して記載します。
- 具体的な貢献内容を詳細に記載すること。
- 他の相続人の理解を得るために、貢献度や具体的な事実を客観的に説明すること。
- 感情的にならず、事実を淡々と述べることが重要です。他の相続人が納得できるように、冷静に貢献内容を証拠を交えて説明します。
- 可能であれば第三者の証言や証拠を添えることで、事実を強調し、寄与分が認められやすくなります。
寄与分が認められない可能性
寄与分は、必ずしも認められるわけではありません。遺言書においては、以下のような場合には寄与分が認められない可能性があります。
- 生活の一部として行った介護や家事が、一般的な家族の責任として扱われる場合。
- ただし、特別に多くの労力や時間を使った場合、または経済的に大きな負担を軽減した場合には寄与分として認められることもあります。
他の相続人の納得を得るための配慮
遺言書で寄与分を記載する際、他の相続人が納得できるように配慮することが重要です。そのためには、長女の貢献度を公平かつ明確に記載し、他の相続人に対してもその理由を説明することが求められます。相続人同士で争いを避けるためには、十分な説明と調整が必要です。
まとめ
家業を手伝ってくれた長女に対して、相続分とは別に財産を相続させたい場合、寄与分を適切に認めてもらうためには、その具体的な貢献内容を明記し、他の相続人が納得できるような形で記載することが重要です。遺言書において、具体的な事実を基にした説明がなされれば、寄与分として相続財産を増やすことが可能となります。
行政書士や専門家に相談しながら、法律的に正当な方法で遺言書を作成することをお勧めします。