遺言書作成の実例:長男には住宅資金を援助したので相続分を減らしたい
遺言書を作成する際、長男に対して住宅資金を生前に援助した場合、その分を相続分から減らしたいと考えることは良くあります。このような場合、特別受益としてその贈与を相続財産に含め、長男の相続分を調整する方法が求められます。生前贈与に関しては慎重な配慮が必要であり、特に相続に関するトラブルを避けるために、遺言書にどのように記載すべきかについて詳しく解説します。
生前贈与(住宅資金援助、結婚資金など)と特別受益
生前贈与とは、被相続人が生前に相続人に対して贈与した財産のことを指します。これには住宅資金や結婚資金など、相続人の生活に大きく関わる重要な援助が含まれます。このような贈与を受けた場合、相続分にどのように反映させるかが問題となります。
特別受益とは、相続人が生前に受けた贈与を相続分から差し引く仕組みです。例えば、長男に対して住宅資金の援助を行った場合、その贈与額は相続分の計算時に「特別受益」として取り扱われます。これにより、長男の相続分がその金額分減額され、相続財産が公平に分配されます。
遺言書に記すべき内容
長男に住宅資金を援助した場合、その贈与額を相続分に反映させるためには、遺言書にその旨を記載することが重要です。具体的には、「長男には住宅資金として生前贈与を行ったため、その金額分は相続分から差し引く」といった内容を明記します。このように記載することで、長男の相続分がその贈与額を差し引いた額に調整されます。
例えば、以下のように記載することができます。
「長男には○○年に住宅資金として○○万円を贈与したため、その金額は相続分に含めないものとする。」
また、結婚資金やその他の贈与があった場合も、同様に遺言書で特別受益を明記することが大切です。
特別受益としての贈与と相続分の減少
長男が受けた住宅資金援助が特別受益として扱われる場合、遺言書に明記されていなくても、通常はその贈与額が相続財産から差し引かれることになります。つまり、特別受益を受けた相続人の相続分はその贈与分を差し引いた額になります。例えば、長男に500万円の住宅資金を援助した場合、遺言書にその記載がなくても、相続財産からその500万円を差し引いた金額が長男の相続分として扱われます。
ただし、トラブルを避けるためには、遺言書にこの点を明記することが推奨されます。記載を怠ると、後に他の相続人との間で誤解や争いが生じる可能性があるためです。
相続財産の総額の計算
相続分を計算する際には、遺産だけでなく生前贈与も含めた総額が相続財産となることに注意しなければなりません。つまり、長男が受けた住宅資金援助を相続財産から差し引くだけでなく、他の相続人が受けた贈与も同様に考慮する必要があります。
相続財産の総額を計算する際には、以下の点に注意しましょう。
- 遺産額:被相続人の遺産(現金、不動産、株式など)
- 生前贈与額:長男や他の相続人が受けた贈与(住宅資金、結婚資金、教育資金など)
例えば、長男が受けた住宅資金が500万円、次男が受けた結婚資金が300万円、長女が受けた教育資金が200万円であった場合、それぞれの贈与額を相続財産に加算して、相続分を計算します。
遺産分割時のトラブル回避
相続に関するトラブルは避けるべきです。特に生前贈与を受けた相続人の相続分を調整する際には、その贈与が相続分にどのように反映されるかを明確にしておくことが大切です。遺言書にその旨を記載しておけば、相続開始後の争いを避けることができます。
さらに、遺言書の内容が不明確だったり、記載ミスがあったりすると、相続人間で意見が対立し、遺産分割協議が長期化する恐れもあります。こうしたトラブルを未然に防ぐためにも、遺言書作成には慎重を期す必要があります。
相続税の計算
生前贈与は相続税の課税対象となる場合があります。住宅資金援助などの贈与がある場合、その額が相続税の基礎控除額を超えると、相続税の負担が発生することがあります。生前贈与の額を含めて相続財産を計算し、相続税の申告を正確に行うことが求められます。相続税に関しては、税理士のアドバイスを受けることをお勧めします。
行政書士の役割
遺言書作成には法律的な知識が必要です。行政書士は、遺言書が法的に有効であり、遺言者の意向を正確に反映できるようにサポートします。特別受益や遺産分割の取り決めに関して、行政書士は適切なアドバイスを提供し、遺言書作成の際に生じる可能性のある誤解やトラブルを未然に防ぐことができます。
まとめ
長男への住宅資金援助を行った場合、その額を相続分に反映させるためには、遺言書に特別受益として記載し、相続財産全体の総額を正確に計算することが重要です。また、生前贈与が相続分に与える影響を事前に明確にし、相続に関するトラブルを回避するためには、遺言書を慎重に作成することが求められます。行政書士のサポートを受けることで、法的に有効な遺言書を作成し、円滑な相続手続きを進めることができます。