家業に尽力する二男に特別な相続を──遺言書で想いを形にする方法

遺言書の工夫で実現!家業の研究を担う二男へ「もう一つの相続」

遺言書の作成にあたり、特に家業を支えている二男に対して「相続分とは別に相続させたい」と考えている場合、その意向を適切に反映させるためには「寄与分」という概念を活用することが有効です。家業のために研究開発をしている場合、その貢献度は家業の発展に重要な影響を与えるものとして、遺言書でその寄与分を明記することで、遺産分割時に二男の貢献を適切に評価し、他の相続人との調整を図ることができます。

ただし、寄与分に関しては法的には強制力がないため、最終的には相続人間の協議に基づいて決定されます。それでも、遺言書に寄与分としての記載があることで、遺言者の意思が明確に示され、遺産分割協議の際に考慮されるべき重要な指針となります。

以下では、遺言書における「寄与分」をどのように明記すべきかについて、実例を交えつつ解説します。


寄与分って何?相続の「頑張った人」に報いる仕組み

「寄与分」とは、相続人が被相続人に対して、相続財産の形成や生活支援、またはその他の有形・無形の貢献を行った場合に、その貢献度に応じて相続分に加算される財産です。基本的には、相続人が家業に貢献したり、経済的支援をした場合に認められます。

家業のために研究開発を行っている二男がその貢献度を評価される場合、遺言書で「寄与分」として記載することが重要です。

遺言書で寄与分を明記するには?正しい書き方と注意点

遺言書において、二男に相続分とは別に相続させたいという場合、その理由と具体的な寄与分を明記することが必要です。以下に記載すべき内容を解説します。

寄与分の理由を記す

まず、二男がどのように家業に貢献してきたのか、その具体的な理由を記載します。家業の発展や研究開発のためにどのような努力をしてきたのか、その内容をしっかりと説明することが大切です。例えば、長年にわたって新しい製品の開発に携わり、売上に大きな貢献をしている場合などが考えられます。

寄与分に相当する金品を明記する

次に、二男が相続する「寄与分」として相当する金品を明記します。これは、二男が家業の発展にどれだけ貢献しているのかを具体的に示すものです。例えば、研究開発の結果として得られた利益や、特定の金額を「寄与分」として相続させる旨を記載します。

具体的には、以下のような内容を記載できます。


遺言書の文例

「私は、二男(次男の名前)が家業のために行ってきた長年にわたる研究開発に深く感謝しています。特に、近年の新製品の開発においては、彼の努力と貢献が大きな成果を上げ、家業の発展に貢献しました。これらの功績に対し、私は二男に相続分とは別に、家業の発展に寄与した分として、総額〇〇〇〇万円相当の金品を相続させることとします。この金額は、二男の寄与分として、他の相続人と分ける遺産とは別に扱われるものとします。」


寄与の事実を明記する

次に、二男の寄与の事実を具体的に記載します。単に「家業に貢献してきた」といった抽象的な記述ではなく、どのような形で、どれだけの期間、どれほどの成果を上げたのかを具体的に示すことが重要です。

例えば、次のように記載できます。

遺言書の文例

「二男は、家業の製品開発において〇〇年から〇〇年にかけて〇〇技術を研究・開発し、その結果、新しい製品を市場に投入することに成功した。この新製品は売上に〇〇%の増加をもたらし、家業の利益に大きく貢献した。」

このように具体的に寄与の事実を記載することで、後の相続人間での理解や協議が円滑に進みやすくなります。

寄与分の額や割合についての評価

遺言書で「寄与分」として相続させる金額や割合については、遺言者がどれほどその貢献度を評価しているのかを示すことが大切です。相続分とは別に、例えば家業の利益にどれだけ貢献したのか、あるいは研究開発による利益や成果を金額に換算してその額を示すことで、他の相続人に対しても納得しやすい根拠を提供することができます。

遺言書で指定された寄与分が後々争いの原因になることを避けるためにも、可能であれば、金額を具体的に示すことが重要です。例えば、家業の売上増加分や利益率などを参考にした金額指定が考えられます。

寄与分はどう決まる?可否や額は相続人の話し合いで決定

実際に寄与分の可否やその額は、遺言書に記載されていても、基本的には相続人間の協議で決まります。寄与分として記載された内容が法的に強制されるわけではなく、相続人間の話し合いによって最終的な取り決めがなされることになります。

  • 協議の余地:他の相続人が遺言に対して異議を唱える可能性があるため、寄与分に関してはその額や貢献度について相続人間で話し合いが必要です。
  • 調整:相続人間で協議が整わない場合、最終的には家庭裁判所に調停を申し立てることになることもあります。

そのため、遺言書にはできるだけ詳細な理由や具体的な金額、評価基準を記載しておくことが、後の争いを防ぐために非常に重要です。

遺言書は「一人で書かない」が正解|専門家に相談する理由

寄与分の評価や記載方法については、法律や税務の専門的な知識が求められる場合があります。遺言書を作成する際には、特に寄与分に関する具体的な記載方法について行政書士や弁護士、税理士に相談し、専門家の意見を取り入れることが望ましいです。

また、寄与分が評価されるべき事実を記載し、金額や割合についても適切に設定することで、遺産分割協議を円滑に進め、遺言者の意図を尊重した相続を実現することができます。


家業を支えた息子に報いたい──遺言で寄与分をどう書くか

遺言書で二男に家業のために研究開発をしてきたことへの感謝を示し、相続分とは別に寄与分を設定することは、家業の発展に対する功績を正当に評価するための重要な手段です。しかし、寄与分については法的な強制力がないため、相続人間での協議が必要となります。そのため、遺言書には寄与分の理由や具体的な金額、寄与の事実を明確に記載し、遺言者の意図が最大限に反映されるようにすることが重要です。